ヘルスアート医療とは、九大心療内科の故池見酉次郎初代教授が提唱された健康モデルです。
「ヘルスアート」を展開して、医療の現場に応用したスタイルの医療で、脳の働きや心の成長に沿って、芸術的に創造することを支援するものです。
ヘルスアート(健康芸術)とは、脳の働きを基盤に芸術的セルフコントロールを目的にした各種芸術のことです。
人間の脳は体と心が出会う「場」となっています。
私たちの脳は身体の働きと心の働きの両方を司っており、この二つの働きの調和こそが、セルフコントロール(自己調整)の基本となり、理想的な脳の働きとなります。
脳は大きく分けると3つの構造で成り立っています。
脳幹・・・植物脳「生かされている」
呼吸や睡眠、血液循環や体温、排便、月経などの調節をします。
大脳辺縁系・・・動物脳「たくましく生きる」
人間の本能的な情動をつかさどっています。
大脳新皮質・・・人間脳「うまく・よく生きる」
思考をつかさどったり、言語や視覚情報を処理するなど、それぞれが複雑に連携しています。
芸術的な脳の働きは人間脳に存在する前頭葉の部分がつかさどっており、これが「よく生きる」です。
「よく生きる」とは、目標、イメージ、理想などを達成、実現、創造、造形して行く課程の総称であり、より向上(進歩)することを意味しています。
一般芸術と健康芸術の違い
前頭葉の「よく生きる」という働きが効率よく発揮されるためには植物脳と動物脳が充分その機能を発揮していることが前提条件になります。
この事がいわゆる一般の芸術と脳の働きから見た健康芸術の大きな相違点です。
すなわち、一般芸術は植物脳、動物脳の調整の有無に関わらず、主として人間脳の前頭葉を働かせて芸術を営むことを訓練しますが、健康芸術では前頭葉を働かせる前に植物脳と動物脳を調整することが基礎的訓練として必要になります。
現代のようなストレス社会では、植物脳や動物脳が整わないままに人間脳を中心に訓練すると失感情症や失体感症といった弊害が生じやすくなります。
したがって、脳の働きに沿った健康芸術的訓練が人間として大切な心身一如の健康への道につながると思います。